マイスターインタビュー

マイスターインタビュー

山内 春夫

これまでに培ってきた
智恵と経験を
次の世代へ伝えていきたい

型枠を製作するところから、コンクリートを流し、型枠の解体までを行います。建物の基礎を担う責任は大きく、幅広い知識と高度な技術が求められます。

もう知っている人はいないだろうけど、私は仙台にあった竹中工務店建設工東北養成所の出身なんです。6期生で同期は42人。東北各地から集まった仲間と「お前の言葉はわからん」なんて言い合いながら、同じ釜の飯を食って勉強しました。当時、大阪万博があって、皆で太陽の塔を見に行ったって言えば、時代が分かっちゃうよね。

型枠大工の技術をしっかり習って、職人になってからは、色々な仕事をしました。思い出に残っているのは、三鷹市の名所にもなっている丸いマンション。
もちろんCADなんてないから、職人も試行錯誤です。加工場の近くに敷地を借りてもらって、実物大の床をはって、そこでスミ出しをしたんですよ。球形の建物だから基本が扇形。そんな面白い仕事が他にもたくさんありました。

型枠大工って汚れるし、夏場は汗だくになるし大変でしょ。でも型枠をバラしたときの達成感は格別なんです。「ああ、美しいなあ」って感動する瞬間がある。だから、やめられない。それに気づいたら、ずっと続けられると思いますよ。

グランマイスターまでいただきましたが、まだまだ働く気でいます。だから監督さんや後輩にも、いろんなことを聞いてほしいですよね。私はマイスターってそのためにいるんじゃないかと思うんです。現場は昔に比べたら便利になったけれど、機械に頼りすぎているところもある。機械に聞くより、人間の経験に頼ったほうがいいときだってあるはずだから、活用してくれたらうれしいです。口うるさくないから大丈夫ですよ。

これまでを振り返ると、いつも「自分が誰にも負けないことってなんだろう」って考えていたような気がします。新人の頃は「体力で一番になろう」って張り切って材料を一度にいっぱい担いだもんです。ただ、これはお勧めしない。腰を痛めるから。そのうち、先輩の拾い出しに個性があることに気づいて、勉強させてもらったり。職長になれば、適材適所に人を割り振ることも、チームをまとめる力も求められる。立場が強みを育ててくれた面もあります。

そうそう。後輩たちが、一級技能士の試験を受けるときは、全員の鉋(かんな)を研いでやるんです。竹中の養成所時代に徹底的にやらされたからね。砥石の仕込みから始まって、鑿(のみ)も鉋も研がされて。それがまた「お前うまいよな」って褒められたんだ。うれしくて、たくさん練習するから、やたらと上手くなっちゃった(笑)。当時のことを思い出したり、若い奴の頑張りを期待しながら研ぐんです。こんな技術もまた財産なのかもしれません。

マイスター

協力会社 グランマイスター 山内 春夫さん・社長 福山 正崇さん