同じ道を歩んできたマイスターだからこそ若手育成への思いは熱い
今回は特別企画として、これまでインタビューに登場したマイスターを中心に、「より働きやすい環境づくりのために」といったテーマで意見交換を行いました。高い技術を持つだけではなく、日頃から後進の指導にも力を入れるマイスター。人材を育てる喜びを感じつつ、仲間が離職すれば誰より悔しい思いをするのもまた彼らです。マイスターの考える理想的な職場とは? 皆さんも一緒に考えてみませんか。
常に職場全体を見渡しているマイスターから、まずあげられたのは「サブリーダーにもっと輝ける場を」という意見です。職種による違いはあれど
「サブリーダーがきちんと機能している会社はコミュニケーション力が高く、職長ができない部分を補ってくれる」
「大きい現場に行くほどサブリーダーの働きが大切になるし、職長が現場から離れたときもサブリーダーが要として動いてくれれば安定感は格段に違う」
と、信頼を寄せる言葉が集まりました。同時に
「小さい班で動く場合、サブリーダーが固定化されてしまうケースもある。ステップアップのチャンスを持たせてあげたいのだが…」
「うちはサブリーダーを持たないから、いろんな相談も評価も全部マイスターの自分のところに来る。そこで成長のきっかけを逃しているのではないかと。いいことも、悪いこともやはりダイレクトに受け取るほうが、自分の成長につながるんですがね」
など、サブリーダーが直接評価される場が少ない現状を指摘する声も聞かれました。次世代を担うサブリーダーが目標を持って働けるよう、評価制度を設けてはどうか。実際一緒に働いている自分たちこそ彼らの頑張りを知っているのだから、我々の声をもっと吸い上げるシステムを作っては、など様々なアイディアが集まります。
「ちょうどサブリーダーの世代って、できることが増えて自信がついてくる頃ですよね。時には縁の下の力持ちから、ぱっと光が当たる喜びがあることで仕事への意欲も増すと思います。そこで上手く波に乗って、次のステップに進んでいく道を、私たちも協力して整えていきたいですね」
このような言葉からも、マイスターがサブリーダーにかける期待の大きさが伝わります。
離職者についてはマイスターが等しく頭を悩ませる問題。
「10代、20代前半で入職し、モチベーションを持ち続けていくのが一番大変なことかもしれない。何か意見を言うというより、むしろ教えてほしいくらいです」
離職の理由は千差万別。あるケースから学び、改善したことが、次のケースには活かしきれないという難しさも感じているようです。
「結局はコミュニケーションなんでしょうね。あの時声をかけていればとか、あの時違う言葉を言っていたら、なんて思うこともありますよ。コミュニケーションについては得手不得手があるだろうけれど、これは我々の課題の一つとして、勉強していかなくてはならない」
同じように悩んだ経験があるからこそ、できる助言もあるといった意見と並び、理想と現実をしっかり伝えることもマイスターの責任だというのも共通認識のようです。
「いいことだけを言うのが私たちの役目ではないと思うんですよ。どんな仕事でも、最初は右も左も分からないわけで、楽しいだけということはあり得ない。仕事を覚えて、一人前になって初めてわかるやりがいがあるでしょう。"つらいことがあっても、その面白さを見つけるまでは乗り越えてやるぞ"みたいなのがないと、やっぱり途中で折れてしまう」
「今は人材不足もあって、入職してもらおう!って気持ちが強くて、つらい面を表に出しづらいところもあるでしょう。ただ、つらいことと、やりがいは別物ではない。乗り越えた先に身につく技術や達成感、任される仕事がどんどん大きくなる面白さを味わってほしい。それは自分たちが全部用意できるものじゃないから難しいけれど、つかみ取っていく手伝いは積極的にしたいですね」
厳しいこともあるよ。でもそれを乗り越えた者だけが味わえる喜びがあるんだよ――マイスターの思いはこんな言葉に集約されるようです。
白熱の議論は第二部へ。ぜひ合わせてご覧ください。