マイスター座談会
正解を"探す"のではなく"一緒につくりたい" マイスターと考える理想の働き方

培った技術と誇りを伝えていくために

毎回必ず話題になるのが若手の育成について。あるマイスターは「昔は、同期がたくさんいて、励まし合い、切磋琢磨しながら仕事を覚えたものです。そういう意味では、今は"一人っ子の時代"。親にも苦労はあるが、子どもも大変でしょうね(笑)」と話します。誰にとっても身近な問題であるこのテーマ。一緒にテーブルについている気持ちで、お読みください。

仕事の楽しさは
与えるもの?つかみとるもの?

「今の若者はおとなしいけれど、教える私たちも年を重ねておとなしくなった。これくらいがちょうどいいのかもしれません(笑)」

キャリア50年というグランマイスターの意見に続き、若い人の働き方を理解し、サポートしたいという意見が多くを占めました。ただし、接し方については悩むところ。

「仕事の中でも若手の育成が一番難しいんです」
「まず声をかけて入職してもらって、次に定着させる、そして育てる。これはなかなか大変なことです」

の声に、多くのマイスターがうなづきます。

「自分の頃は、何もわからないまま現場に放り出されて育てられた。でも、今はそういう現場はないでしょう。とはいえ単調な下積みだけでは飽きてしまう。"ここは一人でやってみろ"って、小さいところでも任せてみることが大切だと思いますね」
「甘やかすのはよくないが、仕事に目覚めるためのチャンスは惜しまずに与えていきたい」
「そのためにはこちらにも余裕がないとね。スケジュールもそうだし、教育にどれだけのコストをかけられるかで、若い人の定着率も変わってくるでしょう」

楽しさを感じるには若手が自ら手を動かし、積極的に仕事を覚えることとしながらも、彼らの習熟度にふさわしい課題を用意し、学ぶ機会は与えていきたいと話すマイスターたち。お互いが手を伸ばし、がっちりと手をつなぎたいという意欲が伝わります。

座談会

自分も成長し続ける姿を通じ
若手を奮起させていきたい

締めくくりは、若手へのメッセージとして、自分が考える業界の魅力を語ってもらいました。共通するキーワードは"達成感"。

「自分の成長を実感しやすいところですかね。昨日できなかったことが今日できる。それが他業種に比べて感じやすいように思います。この達成感は味わった者でなければわからない」
「我々職人には、何年もかけて磨いた技術や実績があります。何人もの監督、仲間と一緒に建物を完成させてきた。建設業は生半可な気持ちでやり通すことは難しいが、そこで頑張り続けたという達成感が財産です」
「一流のスポーツ選手というわけにはいかないけれど(笑)、ああ、こういうふうにキャリアを重ねていけばいいんだというモデルケースになれたら。そのためにもマイスター制度には大きな意味があると感じています」
「成果は目に見えることばかりではありません。自分は防水の仕事をしていますが、保証期間を過ぎても、漏水もせず機能を果たすこと、つまり何事もないことこそ最高の仕事ということになります。何年続けても楽しくて仕方がない。大好きな仕事です」

マイスターが、普段こんなことを話す場面は少ないかも知れません。熟練の技を持つ職人だけが語れる言葉も、仕事中、彼らの背中から感じ取れるメッセージも、ぜひ多くの人に届きますように。

座談会は、杉山次長のご挨拶で締めくくられました。

「マイスターの皆さんも、憧れの親方や先輩を目指してこられたかもしれません。今は皆さん自身がその立場におられる。建設業界全体にさまざまな課題の解決が迫られるなか、のんびりしている時間はないと感じています。今回寄せていただいた貴重な意見を受け止められるよう、私たちも体制を整えていきたい。年に一度のこの機会をとても大切に思っています。今日はありがとうございました」

マイスターの皆さん、ありがとうございました!

座談会