多様性を力に建設業界は進化する
毎年年末に行われるマイスター座談会。職種もキャリアも異なる10人のマイスターが集まれば、もちろん十人十色の意見が出てきます。歩く道は違っても、目指すのは「建設業界をよりよくしていきたい」という大きな目標。今回マイスターが意見を戦わせたトークテーマは、時代を反映したものであり、誰にとっても身近なものばかりです。
座談会は、福田副本店長のご挨拶からスタートしました。「午前中の仕事もあったと思いますが、お集まりいただいて感謝です。本日はベテランばかりでなく、新たにマイスターに認定された方も参加しています。おめでとうございますと、お祝いを申し上げたい。この座談会が我々の糧になり、双方のプラスになることを願っています」
最初のテーマは人材確保について。皆さんも人材不足の影響を実感されていると思いますが、国土交通省によれば、1997年のピーク時685万人だった建設業就業者数は、2023年には483万人に。さらに就業者の高齢化も課題のひとつです。
このような状況において、期待が寄せられているのが外国人就労者。マイスターの8割が現場に大きな影響を与える存在と捉えていますが――
「やっぱりコミュニケーションが一番の問題になってきますね。現場の品質や安全を守るために伝えていることを、どこまで正確に理解してもらえたのか判断しかねることがありますから」
「通訳がいるといいなぁと思うんですよ。同じ国の先輩なんかが、その役目になってくれるのが理想だけど、いつも適任がいるわけじゃないからね。なんとかいい道が見つからないかなと」
試行錯誤が続く現状を心配する声と同時に、外国人就労者の技能を高く評価するマイスターも。
「東南アジア圏の現場経験者を雇ったんですが、図面もきちんと見られる。釘も打てるし、丸鋸も使える。なによりやる気満々でありがたい(笑)。彼らにしたら、日本の現場は母国と比べると安全なんだそうです。お互いがこうしていい関係を築ける例もあります」
「技能オリンピックで外国人が優勝するなど、実績をあげつつある。高い技術力とやる気がある人は、どんどん"求められる人材"になっていくでしょう」
多様性が時代のキーワードになる現代社会において、外国人就労者は存在感を増していくことでしょう。歩み寄る糸口になるのはこんな言葉かもしれません。
「一番いけないのは、お互いがあきらめちゃうことだと思うんです。"きっと伝わらない""言っても分かってくれない"って壁ができちゃうと、やり取りする情報も関係も、薄っぺらくなるでしょ。そんな関係が当たり前になっちゃうのは避けたいですよ」
「そうそう。知った顔になるとね、日本語と外国語もうごちゃまぜで意思疎通できるようになってくるんですよ(笑)。身振り手振りも交えてね。そういう身近なところから始まっていくんだろうね」
"そういう身近なところ"で生まれるコミュニケーションの種が、やがて実を結ぶことが望まれます。
現場で女性の職人を目にする機会も増えてきました。そして2024年、女性初のマイスターが誕生!なかなか届きにくかった女性からの声は、よりよい環境づくりの手がかりになります。早速意見を聞くと――
「一緒に働く女性がもっと増えてくれるとうれしい、というのはあります。同じ現場で、他職種の女性職人さんがいると、ランチ会とかするんですよ。女性同士"そうだよねそうだよね"って言い合える環境は大切です」
さらに、男性にとっては、"あって当然"の環境を、女性にも"あって当然"のレベルに押し上げていくこと。具体的には女性トイレ、更衣室の整備などが課題として取り上げられました。
男女の垣根なく働ける環境整備は、すべての業種において、大きなミッションです。とくに男性が大半を占める建設業界では、まだまだ多くの女性の声が眠っていることでしょう。この座談会が、一人ひとりの願いをかたちにする第一歩になることが期待されます。
まだまだ続く熱い議論。第二部も合わせてご覧ください。